2024年6月1日更新しました
6月19日は、太宰治の桜桃忌です。
1948年に亡くなっているので、没後70年となりました。
また、この日は太宰の誕生日でもあるので、生誕祭と呼ぶこともあります。
桜桃忌についてお伝えします。
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太宰治
それにしても太宰の人気は衰えません。
生誕一〇〇年の2009年には『ヴィヨンの妻』、その翌年に『人間失格』の映画が上映されましたし、アニメ「文豪ストレイドックス」でも太宰キャラが光ります。
さて、弘前は太宰治が管制弘前高校時代を過ごした街。
6月17日に弘前ペンクラブ主催の「第6回太宰治 生誕前日際」に参加しました。
blog.tugarujikukan.info太宰治学びの家で太宰の写真にお花を献花し、黙祷。
その後、斎藤三千政会長の道案内で、太宰治と長部日出雄のゆかりの地を訪ねました。
弘前出身の直木賞作家、長部日出雄
『桜桃とキリスト』など太宰治に関する著書も多数ある長部日出雄(おさべひでお)先生は、弘前出身の直木賞作家。
昭和9年(1934)に弘前市土手町一三三番地に生まれ、84歳の現在は東京都にお住まいです。
1941年、第一大成国民学校に入学され、写真はその跡地。
戦争が激しくなった4年生のころころには、岩木山のふもと船沢地区まで児童が鍬などを持って、開墾の日々を送ったことを、著書のなかで語っています。
利発で野球少年、さらに映画が大好きというこども時代を送りました。
『津軽世去れ節』『津軽じょんがら節』で、長部先生は直木賞作家に。
昭和48年、津軽書房から発刊し、写真の文庫本は私の蔵書。
生家は戦前はカフェー、戦後はレストラン『和久』となり、長部先生のお兄さんが経営。
いまは看板だけ残って、駐車場になっています。
土手町十文字から少し入ったところ、旅行会社「たびすけ」の隣です。
取り壊される前の建物は『キリンビヤホール和久』の看板が目立ち、間口の広いりっぱなお店で、市民に広く親しまれていたそうです。
残念なことに、私はこちらで食事をしたことがありません。そのころ飲めなかったので、夜は出歩いたことがなかったのです。
長部先生が子どもの頃によく遊んだ住吉神社。
昔はうっそうとした鎮守の森だったそうですが、大きな木は切り倒され、往時の面影は薄いかも。
先生のエッセイなどに何度も出てくる、思い出深い神社です。
郷土の文学研究において、第一人者である斎藤三千政先生が見せてくれた資料。
この後てくてくと歩いて、茂森の禅林街へ。
ふだん歩いていないので、約3キロの道のりが遠かった。
禅林街の長勝寺にある若君のミイラが発見されたときは話題になったそうです。
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太宰の最初の妻、小山初代の墓
太宰治は官立弘前高校に通学し、小説の同人誌を立ち上げて自らの作品を寄稿をしました。
義太夫の女師匠の元に通い、三味線を習ったり、学友の影響で左翼にかぶれたり。
そして、青森の置屋にいた芸妓の紅子【本名は小山初代】と知り合い、交際が深まります。
官立高校は18歳で入学ですが、芸者遊びを覚えた太宰。
金木の実家は津軽地方で指折りの大地主ですから、小遣いがたっぷり送金されていたのでしょう。
やがて紅子は東京大学に入った太宰を追いかけて上京。ふたりは同棲。
太宰の最初の妻となりますが、裏切りや心中未遂のあげくに破局してしまいます。
小山初代は太宰と別れた後、中国の青島(チンタオ)に渡り、働きます。 しかし、若くして客死し、弘前の菩提寺に葬られました。
小山初代のお墓の写真。
ふたつの墓石が並び、ふたつとも小山家のお墓です。
弘前市禅林街にある清安寺にて。
参加者の皆さんと手を合わせて、幸薄い生涯に思いをはせました。
小山初代のお墓のわりと近くに、弘前出身の作家・今官一と、長部先生の兄のお墓もあります。
今官一は蘭庭院の息子だったので、そちらに墓地があります。
弘前城の南、禅林街と呼ばれる地域の杉並木道に沿って、33もの曹洞宗の寺院が建ち並ぶ寺町に今官一の生家、金平山蘭庭院はある。
本堂裏、ゆるい坂の参道右先にあった「先祖代々之墓」、裏に昭和七年今官吾と、父の名がある。
墓前右側に水子地蔵が浮き彫りされた小さな碑、官一の27回忌と妻公恵の一周忌の板塔婆が立てかけられている。
初夏の一日、音もなく、風もなく、陽は真宙天に。
レイテ沖海戦でただ一艦帰還した戦艦「長門」の乗り組水兵1200人、生き残ったのは僅か30数名、その中の一人であった官一。
古刹に生まれ、「存在の空」を一心に書き続けた彼の心眼に映った真実は何であったのか。
彼が好んで色紙に書いた言葉がある。
——〈花まぼろしの世に在らば 世も幻の花ならん〉。
禅林街は33ものお寺が並んでいて、寺の裏に墓地がつながっていました。
一番の奥に歴代藩主の霊廟やお墓があり、全国的にこれほどお寺がかたまっているのは珍しい。
blog.tugarujikukan.info
たっぷり中身の濃い文学散歩で、有難うございました
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