いまの小学生は、川遊びやため池で釣りをすることがないと思います。
かつては川で泳ぎ、おぼれて亡くなるという痛ましい水難事故が、毎年のようにありました。
そのせいか「カッパに、しりこだまを抜かれた」という伝承は、全国にあるわけです。
津軽地方の木造町や十三湖の村では、カッパを水虎(すいこ)様として、ほこらにお祀りすることがありました。
青森のカッパ伝説について、お伝えします。
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水虎さま
『十三湖のばば』は、田舎館村出身の児童文学作家である故・鈴木喜代春先生の名作。
津軽半島の十三湖の周辺は昔、腰までぬかる泥田のため、農家はたいへんな苦しみを味わいました。
よちよち歩きの乳幼児が、用水路の堰に落ちて溺れるケースもあったそうです。
この本は、大正時代の農家の暮らしをテーマに、力強く生きた農婦と子どもたちの物語。
「十三湖のばば」のイラスト絵は、故・山口晴温さん。
青森の風景をノスタルジーたっぷりに描く画家でした。
表紙に、水虎さまのほこらが描かれています。
地域の人たちは初物のキュウリが成ると、お供えして 、子ども達が水路や川の深みにはまることがないように、祈りました。
水虎さまは、神像。
カッパを神様として、お祀りしたのです。
メドツ伝説
青森県では、水虎さまのほかに「メドツ」「メドチ」伝説も。
画像は、青森県の文化史リーズ25「津軽の伝説1」坂本𠮷加著の、50ページから。
カッパのことを、メドツと言うのです。
水死者があればメドツのせいだと信じ、人のダンコ(しりこだま)を抜くと怖れたのです。
メドツ伝説は南部地方にもあり、 櫛引八幡宮にも伝説があります。
カッパ昔話
百姓が田打ちに行くと、カッパがにぎり飯を盗むので、捕らえて殺そうとすると、カッパは謝った。
そして、腰や肩の痛みと腹痛を治す方法を教えてくれたので、カッパを放してやった。
それから、その百姓は村人の病気を治した。
ーー車力の昔話
骨接ぎの医者がカッパの怪我を治してやると、カッパはお礼に骨接ぎや打ち身止めの方法を教えたので、その家は骨接ぎの名人として知られるようになった。
ーー津軽昔コ集
カッパは、とらえどころのない水の妖怪のひとつ。
あるいは水神、水精とのこと。
頭に水をたたえたお皿を乗せ、腕が伸縮自在で抜けやすく、人間との相撲が好き。
田仕事を手伝う反面、馬を水中に引き込み、溺れさせる。
キュウリは好きだが、金物が大嫌い。
水にも居れば、山にも住み、陸上の自由に歩いて、もちろん泳ぎは達者。
狐のように人に取り憑き、女性を妊娠させることもあるそうな(@@;)
カッパは、侮れませんね。
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太宰治と河童
太宰治は愛人の山崎富江と玉川上水に、6月13日に入水して、亡くなりました。
6月19日は太宰が生まれた日で、遺体が見つかった日。
桜桃忌ですね。
昭和23年の6月、梅雨時で川は増水していたそうです。
河童に誘われたかのような最期。
太宰と親交があった民俗学者の折口信夫は、津軽の水虎像に魅せられ、土地の仏師にその像を模造させ、魂入れをし、家の守り神としたとか。
太宰のふるさと金木町のとなり、木造村のお寺に、水虎さまは大切にお祀りされています。
まとめ
津軽にも南部にも、メドチ伝説があり、津軽半島を流れる岩木川流域では、水虎さまのほこらがあります。
夏は、水難事故に気をつけてお過ごし下さい。
お風呂場の浴槽も、ご注意くださいね。
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