2019年6月11日更新しました。
弘前市真土地区にある、佐藤陽子先生のこぎん展示館へおじゃましました。
津軽こぎん刺しや刺し子などを見学できる、私設の展示館です。
明治期の古いこぎん衣や、先生の新作もたくさん鑑賞できました。
とても貴重なお話も伺えたので紹介します。
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佐藤陽子先生のこぎん作品
ブログ掲載を許可して頂きました。
有難うございます。
佐藤陽子先生はお勤めと家事や育児の一方で、若いときからこぎん刺しを勉強されました。
前田セツさん、高橋寛子さんに師事し、帯やタペストリーなど大作もたくさんあります。
仕事を退職後はワークショップや体験講座の講師として、地元はもちろん東京や九州にも出張されている陽子先生。
そんなお忙しいなかお目にかかることができました。
下の写真は陽子先生がワークショップで使用した、麻布に刺す『さや型』
弘前の市章 である「卍」があります。
卍は藩祖である津軽為信公が、天下分け目の関ヶ原の戦のとき旗印にしたことで知られていますね。
水色の糸がさわやかな印象です。
佐藤陽子こぎん展示館ではこぎん材料を各種、取り揃えています。
「太めの糸のほうが作品が映えます。
師匠の高橋寛子さんは、裏を見てもきちんと一目が出ていて、とても丁寧に刺したことがわかります。
糸こぎが、こぎん刺しではポイントのひとつですよ」と、陽子先生。
*陽子先生が『津軽こぎん刺し図案集』の本を出版されました。
高橋寛子さんが刺した図案を、弟子の陽子さんが一冊にまとめられたのです。
生前、寛子さんは本を出すことなく亡くなられたので、きっと天国で喜んでいることでしょう。
弘前の桜やりんごを原料に、草木染めのこぎん糸。
昔は藍の麻布に白い木綿糸で刺したこぎんですが、いまは多彩な色目で楽しい。
石場家の花ふきん
今回は、エッセイストの片山良子さんとご一緒に訪問させていただきました。
片山良子さんは長く雑誌「暮らしの手帖」に寄稿した文筆家。りんご園の奥様として農業のことや津軽こぎん刺しをテーマに、執筆されたのです。
画像の花ふきんは、弘前市亀甲町の古い商家である石場家の故・大女将が刺した1枚。
使うのがもったいないと感じられる、緻密な花ふきんでした。
花ふきん2点は、片山さんの資料です。
「石場家の大女将はゆったりとした品のある方で、司馬遼太郎に気に入られて、随筆に書かれた方なんですよ。
日々の忙しさのなかに針仕事に喜びを見出した大女将の花ふきんに注目したのが、『暮らしの手帖』の大橋鎮子社長なの。そこから津軽のこぎん刺しを知って、私に書くように勧めて下さったの」
片山良子さんが思い出を語ってくれました。
その当時は、こぎんや刺し子の取材にはご苦労があったようです。
農民衣としてのこぎん刺しや刺し子を表舞台に出すことをためらう気持ちが、地元の人たちの胸にあったとか。
いまはハンドメイドとして人気ですが、ここまで認知されるには関係者の人知れない苦労があったのでしょう。
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前田セツさんのこぎん作品
片山良子さんがその日、お持ちになっていたバッグのこぎんは総刺しで見事!
こちらは、故・前田セツさんが刺したそうです。
精緻な菱型の文様を囲むのは、「ネズミの歯っこ」の流れ。
「流れ」は文様を展開させるときの刺し模様です。
文様との組み合わせで、無限にひろがるのですよ、こぎん刺しは。
貴重な作品を目の当たりにできて、幸せ♪
古作こぎん
佐藤陽子こぎん展示館では、古いこぎん衣も見学できます。
名もなき農家の女性が、自分の家の畑に麻の種を撒き、育った麻を刈り取り、糸を紡いで機織りして、ようやくできた麻布。
目の粗い麻布に防寒と耐久性をもたせるために、木綿糸で丹念にこぎんを刺しました。
陽子先生のHPでは、こぎん刺しの製図をみることができます。
佐藤陽子こぎん展示館
◆ 〒036-1323
電話&FAX 0172-82-3367
見学には予約が必要です。
こちらは、蚊帳(かや)に刺したこぎん刺し。
「昔の蚊帳は、重くてずっしりとして、仕舞うのに場所を取ったのよ。
だから、みんな捨ててしまった。自家栽培の麻で織り上げた蚊帳だったから、処分するのが忍びがたくてこぎんを刺したのでしょうね」
2019年1月11日~1月21日まで、弘前市の藤田記念庭園・考古館にて、『こぎん冬の陣Part2~高橋寛子氏とともに~」が開催の予定です。
貴重なこぎん作品を鑑賞できる機会です!
まとめ
すてきな作品を展示しており、見学には予約が必要です。
今や海外からも注目されるこぎん刺しの秘話を拝聴でき、得難いひとときをでした。
両先生ありがとうございます!
2018年12月21日に記事を更新しました。
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