<
『泣面山(なきつらやま)に雨』
北狄(ほくてき)作品集 6が発刊されています。北狄は、青森市を拠点に活動中の文藝同人誌。歴史は古く、2013年に創立60周年を迎えました。東奥日報社主催の東奥文学賞第3回大賞受賞者、青柳隼人(あおやなぎはやと)さんを輩出しています。表紙もインパクトがあります! 三内丸山遺跡を象徴する『板状土偶』を主体に歴史の進化をモチーフにした絵は小沢幸氏の作品「縄文の叫び」
こちらの作品集、ずらりと同人が寄稿しています。
①泣面山に雨(原稿・21枚) 白川光
②さくらさくら桜まつりの仕掛け人(58枚) 高畑幸
③眠らない青春(35枚) 青柳隼人
④手を握っていただけますか(52枚) 小野充雄
⑤おふくろの眼鏡(48枚) 笹田隆志
⑥忘れもの (43枚) 小野誠二
⑦ルポルタージュ 五固町騒動(59枚) 秋村健二
⑧「碑」私記
「原物と怪物」から「碑」(75枚) 星野富一郎
スポンサーリンク
表紙の土偶とマッチした青柳さんの『眠らない青春』が印象に残りました。すこしですが、感想を。
主人公はシニア世代の男性で、卒業30年の節目に開催の高校の同窓会へでかけます。遠方で暮らす同級生も多く、昼は三内丸山遺跡を見学し、夜は夜で会合という同窓会です。
主人公には、忘れたくても忘れられないクラスメイトがいました。野球部のエースだった小梶です。才能に秀でた彼ですが、あるときコーチからこっぴどく叱られ、そのいらだちを紛らわせるために、部室でバットを素振りする姿を目撃。
その暗い眼つきが気になったのです。小梶は本番の試合で振るわずに終わり、卒業後は金融機関に就職。けれども長続きせず、寸借詐欺まがいに旧友から金を借りることも。
主人公も金を貸したひとりで、未だ返してもらっていない……。
そんなストーリーで、交錯する青春の残像が秀悦に描かれて、心に残ります。人物像を深く掘り下げて、最後まできっちり、リアリティある友情を描きました。
さすが、40年以上も書き続けている青柳さんです。
秋村さんのあとがきを読むと、同人がご高齢のため逝去されたりして、作品集の発行が遅れたとか。
文学の愛好者が高齢化しているのは、どこも同じなのですね。
若手は動画作りやネット配信に忙しく、じっくり小説や評論に向かわない傾向がありますから。
そんななかでも、着々と書き続けているみなさんの作品はずっしりとこの胸に響きました。
2018年8月4日更新しました。
スポンサーリンク