つがる時空間

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青森のイタコに関して直木賞作家・長部日出雄先生の本

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青森にはかつて、仏おろしや口寄せをするイタコが何人もいました。

昭和40年代はブームとなり、全国のデパートの催事場に呼ばれることもあったと聞いています。

また、左幸子三國連太郎が出演した映画『飢餓海峡』では、盲目のイタコが口寄せをするシーンが挿入され、不気味な感じで登場。

しかし、現在ではイタコは津軽地方にはいないような感じです。
もしも東京からやってきた方に、イタコのことを訊かれたらどう説明したらいいのでしょうか。

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マザーツリー(白神山地


長部日出雄先生の本に、『津軽空想旅行』津軽書房刊があります。
空想旅行というタイトルですが、1970年代に長部先生が取材した津軽のことが詳しく載っているエッセイ集です。

弘前市出身の長部先生は、『津軽世去れ節』『津軽じょんがら節』で
1973年に第69回直木賞を受賞されました。

1989年には、映画『夢の祭り』を原作、脚本、監督で制作。
柴田恭平さんが主役を務め、津軽三味線にひたむきな情熱を傾けるストーリィで、やがて若さを失い、尾羽を打ち枯らした主人公が憧れの女性(加賀まりこさんが妖艶に演じた)を追いかけて、雪原に倒れ伏すラストシーンは胸がぎゅっと締め付けられます。


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  渾身の著書

津軽空想旅行』は長部先生の渾身の著書。
『死者に近い土地』と『本州北端のイタコ』の章に、小泊の長谷川ソワさんに取材したインタビューが載っています。
明治生まれのソワさんが失明した経緯と、イタコの修行について、とても詳しく。

独特の音調で語られたイタコの仏を呼ぶときの文句や節。
それは師匠ごとに違いがあったようです。
また、梓弓(あずさゆみを用いて、ベンベンベン……と、単調なリズムを刻みながら延々と祈祷を続けて、神憑りというか、
憑依状態というか、トランス状態に入るのだそうです。

本には、『ほんとうのイタコとは、幼いときからきびしい修行を積んで、
自分の欲するときにはいつでも、
朦朧状態に入ることの可能な女性を指す』とありました。

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では、イタコは津軽に特有の信仰だったのでしょうか。
東北に多かったけれど、沖縄には別な呼び方で神おろしがいますし、江戸の風俗に詳しかった故・杉浦日向子さんの「百物語」にも出てきます。

梓弓を打ち鳴らして、口寄せする年配女性の姿が漫画で。
江戸期は、仏おろしは珍しくない習俗だったのかもしれません。

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写真は、青森県今別町袰月の海辺に建つ赤い鳥居。
漁の安全を祈願して、お祀りしているのでしょうか。


津軽にイタコが昭和40年代まで残っていたのは、需要があったからでしょう。
戦争で命をおとした息子の霊をおろして、家族への伝言が聞きたい。
遺骨もなにも帰ってこない、夫があまりに哀れでやりきれないから、せめて言葉だけでも。
そんな母親や未亡人の気持ちが、イタコを必要とした。
かつての津軽の女性たちは、死者に寄せる想いが濃かったのです。

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